鬼大城(うにうふぐしく)という名の人物がいた。
それはそれは剛健な武将で、尚巴志の七男・尚泰久王の頃、琉球王府軍のトップを務めるような人だったらしい。
ただ歴史本で知っただけの時、この人のことは嫌いだった。
やることなすことがちょいちょい姑息で、王に讒言をしたとか、人妻をかっさらったとか、”恋に狂った男”とまで書いている本もあった。
勝連半島を散策して恩納村に戻る途中、たいして興味はないけれど、近くを通ったついでに鬼大城の墓に立ち寄った。
ついさっきまで、散々小ばかにして、
「しょうもない男らしいで」
とケセラセラ話していたのに、実際に墓の前に立った瞬間に『あぁ。申し訳なかった。』と思った。
この人はめちゃくちゃ尊敬されている人だと、直観的に思った。
「いろいろ言う人はいますけど、とても素晴らしい方だったんですよ。彼は一族の誇りです。」
と語りかけられているような気がした。
沖縄の墓に行くと、子孫の心意気みたいなものを感じるときがある。
護佐丸の父ちゃんじいちゃんの墓に行った時は『うわ…かっこえぇ』と思ったし、護佐丸の兄ちゃんの墓に行った時も同じような粋さを感じた。
テレビを見ていたら、琉球空手に魅了された外国人が鬼大城の墓を訪れるというシーンがあった。琉球空手の礎を築いた人でとても尊敬しているんだ。と言って外国人は墓の前で泣いていた。
人の熱い気持ちや深い感謝の気持ちは、念となってその場に残るんだと思う。
政権が変わって謀反を疑われた鬼大城は、琉球王府軍に追いつめられて逃げ込んだ洞窟で、火攻めにあって亡くなった。その洞窟がそのまま墓になったという。入り口がすすけているのはその時を物語っているとかいないとか。
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